「なす、なす、茄子の漬物はどこ?…なす……」
鎌倉の小町通りにある漬物やさん。
豊富にある試食の漬物に人が群がっていた。
ちょうど私達親娘が口にしていたのが、茄子の漬物だった。
「あ、茄子ならココにありますよ。」
見知らぬご婦人たちに思わず答えてしまった。
おひとかたは嬉しそうに私に微笑んだ。
もうおひとかたは、もう茄子を頬張っていた。
あちらでは梅肉に何かを混ぜてあるものを舐めているご一行がいた。
「でも、これは漬物じゃないのよ。」
「そうねえ、漬物じゃないのよね。」
なにかご事情がおありなのだろうが、言い訳をしながら一通り舐め渡っていた。
試食はおいしい。
家に帰って茄子の漬物、店先で置いてあったように盛り付けてみた。
試食よりは贅沢に、輪切りだ。
ミョウバンで漬け込まれた茄子。
美味。
つけ汁は流してしまうのがもったいないくらい、
透き通った綺麗な青だった。
登茂子